Gamesindustry.bizにOculusのコンテンツヘッド、Jason Rubinへのインタビューの内容が掲載された。GDC 2017で行われたこのインタビューの中で、RubinはOculusが開発するVRコンテンツの将来についてコメントした。FacebookにとってOculusが「用済み」になる日がいつか来るかもしれないという。
FacebookはVRコンテンツの開発に大規模な投資を続けているが、それが永遠に続くことはない。
Facebookのビジネス
VRコンテンツの開発促進に力を入れているFacebook。その金額は、同社がOculusやVRにかける期待の大きさを示したものだ。他のヘッドセットに比べてRiftが売れていないという統計やRiftを体験できる店舗が減っている事実はあるものの、Facebookが今すぐVRコンテンツの制作から手を引くとは考えにくい。Rubinが話したのは、あくまでも将来の話だ。
そもそも、Facebookはコンテンツの開発によって利益を得る企業ではない。Facebookはプラットフォームを提供する企業であり、同社がコンテンツを制作するのは自社のプラットフォームにユーザを囲い込むためでしかない。
SNSを利用するユーザが増えれば、一般のユーザや企業が勝手にコンテンツを作るようになる。そうなれば、オリジナルのコンテンツを用意しなくても適切に管理するだけで利益を生み出すことができる。FacebookはVR業界でも、Oculusを使って同じことをしようとしている。
FacebookがVRコンテンツの開発を支援しているのは、ユーザをそのプラットフォームに惹きつけるためだ。十分な数のユーザを集めることができれば、自然に開発者も集まってくる。
ユーザが多いことは、デベロッパーにとって魅力だ。サードパーティのデベロッパーがコンテンツを作成し、ますますユーザが増える。もはや投資の必要はない。
これがFacebookの行うプラットフォームビジネスの形である。VRコンテンツに対する投資は当面続くだろうが、長期スパンで見ればそれは一時的なものでしかない。Rubinが言っているのはこのことだ。
「デベロッパーが楽しみながらコンテンツを開発し、お金を稼げるような健全なVRのエコシステムが構築された後のことを考えてみましょう。私はFacebookからこう言われるかもしれません。『ありがとう、Jason。エコシステムを作ることができたので、後は彼らに任せましょう。個人の開発者や小規模~大規模なデベロッパーに、そしてEAのようなパブリッシャーに。後は彼らの仕事です』と。」
FacebookがVRに望むこと
Facebookが望んでいるのは、自社の投資によってコンテンツを作り続けることではない。代わりに、VRプラットフォームを構築することを望んでいる。彼らはそのためにVRゲームを利用しているが、ゲームを作ることは手段であって目的ではない。
「『コンテンツを作ること』は、Facebookが長期的に関わっていきたいと考えているビジネスではないでしょう。FacebookはVRが上手く機能してくれること、そして巨大に成長してくれることを望んでいます。Facebookが最終的に目指しているのは、人と人とを繋ぐソーシャルワールドを作ることです」
FacebookのようなSNSは、バーチャルなコミュニケーションの場である。VRでの交流が一般化すれば、Facebookはその中心になれる可能性がある。VRが社会に占める役割が大きければ大きいほど、Facebookの影響範囲も拡大するのだ。
誰もが「将来はVR空間で大勢の人がリアルタイムに交流するようになる」と考えているが、まだVRユーザは少数派だ。なるべく多くの人をVRに引き込むために、ゲームを中心としたコンテンツが開発されている。
Rubinは、FacebookがVRでAppleのようなエコシステムを作ろうとしているという。
「私たちは理解しています。自分たちの役割の重要性も、現在開発されているタイトルの数々が成果を上げるだろうということも、そして我々の状態がiOSのような『自分で稼ぐ、素晴らしいエコシステム』からどれほど遠いものであるのかも。App Storeは自己完結型のエコシステムになっているため、Appleが投資してコンテンツを開発しているわけではありません。その段階に達するまでに、どれほどの時間がかかるかは分かりません」
Appleを例として出すRubinのコメントは、Facebookの目指すプラットフォームのスタイルをはっきりと説明している。2017年を通して月に1タイトルのペースで登場するOculus Studio作品は、Riftユーザの増加に貢献するだろう。
VR普及に重要なこと
また、Riftの価格が引き下げられたことも重要だ。このインタビューはOculusがRiftの値下げを行う直前に行われたものだが、RubinはVRデバイスの価格が普及には重要だと話している。Riftのデモで興味を持ってくれる消費者は多いが、多くの消費者が価格の改定を求めているという。
「機能の追加、解像度の向上、ワイヤレス化といったグレードアップはVRに欠かすことのできないものです。しかし、それによって現在の価格よりも値上がりしてしまうのであれば逆効果です。それは、消費者が望むものではありません。消費者は手頃な価格を望んでいます。長期的にはこういった性能の向上がなされることになりますが、一番重要なのは価格です」
Rubinは、SonyのPSVRが消費者のニーズを表した例だと考えている。PSVRは399ドル(Move同梱版でも499ドル)で販売されており、非常に多く販売されたヘッドセットの一つとなっている。
「PS4がたくさんあるからPSVRがたくさん売れた、というだけではないと思います。消費者はその価格に反応したのではないでしょうか」
多額の投資によって開発された高品質なコンテンツと、Rift本体価格の引き下げでユーザ数の増加を狙うFacebookとOculus。彼らが目指す自己完結型のエコシステムは、ユーザにとってもデベロッパーにとってもプラスとなる。しかし、完成がいつ頃になるかはRubinにも見えていないようだ。
Oculusの買収を含めたFacebookによるVRへの投資が報われるときは来るのだろうか。そして、それはいつになるのだろうか。
参照元サイト名:Gamesindustry.biz
URL:http://www.gamesindustry.biz/articles/2017-03-14-facebook-may-one-day-have-no-need-for-oculus
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