VRを実際に体験してみると、現実には存在しないと頭ではわかっているのに、実在するかのように感じられることに驚かされる。
視覚的なVR体験だけでも相当衝撃的だが、現在でもVRの研究はさらに進んでおり、触覚や嗅覚など、人間の感覚すべてをバーチャル体験可能にしようとしている。
しかし…どんなに技術が進歩しても、VR化は難しいだろうなと思わせる感覚もある。
それが、味覚だ。
何せ、食べ物は実際に噛んで味わって、飲み込まない限り食べた気がしない。
だが!実は味覚をVR化する研究も進んでいるのだ。
この記事では、味覚VRについて紹介しよう。
食べ物もバーチャルに味わう時代が来る!?味覚×VR
味覚とは、言うまでもなく舌で食べ物を味わう時の感覚。
味覚が存在しなければ、不味いモノを食べても不味いと思わなくて済む反面、どんなに美味しいモノを食べても、美味しいとは思えない。
これを技術的に再現しようというのが味覚VRだ。
ちなみに、舌で味わう「味覚」には、渋味、苦味、塩味、甘味、酸味、辛味、旨味といったものがある。
この内、辛味は触覚で感じている「痛み」であって、厳密には「味覚」ではない。
また、ニンニクの特徴的な風味や、柑橘系のさわやかな風味といった「風味」も「嗅覚」で感じているため「味覚」ではない。
このため、人間が感じている食べ物の味を完全に再現するためには、実は「味覚」以外の感覚も再現する必要がある。
Googleのエイプリルフールネタ「Haptic Helpers」
ちなみに、今年のエイプリルフールでは、Googleがエイプリルフールネタとして、「味覚」の再現を含んだVRのデモンストレーション映像を作成している。
この映像では、ヘッドマウントディスプレイを着用した人のそばに、一人ヘルパー役の人間がつき、その人間が食べ物を食べさせてくれるというもの。
超強引なエイプリルフールネタ…だが、実際に「味覚」のVRと言われてもどんな仕組みになるのか想像できない人は少なくないハズ。
それでは、具体的に味覚VRについて見て行こう。
ダイエットに役立つ!?東京大学大学院 廣瀬・谷川・鳴海研究室による味覚VRの研究
まず最初にご紹介するのは、VR Insideがインタビューを行った東京大学大学院 廣瀬・谷川・鳴海研究室による味覚VRの研究。
この研究では、クッキーにマーカーをつけ、ヘッドマウントディスプレイを介してみることでVR空間ではクッキーをチョコクッキーに変換。
さらに、ヘッドマウントディスプレイに装着したチューブからチョコの匂いを出してチョコクッキーを表現した。
また、実際のクッキーよりも、VR映像では大きく表示して食べてもらうという実験も行っており、通常に食べるより少ない枚数で満腹感が得られるという結果を出している。
いずれも、ゼロから仮想現実を作りだすのではなく、現実のクッキーの味覚や大きさを、拡張表現する…という形ではあるが、カロリーを制限したり食べ過ぎを抑えたり…といったダイエット用途としては可能性がありそうだ。
食べるものと味覚とを切り離す!「Project Nourished」
現実に存在する食べ物を、VR技術で別のものに変えてしまう…という技術に、「Project Nourished」というものも存在している。
「Project Nourished」は、寒天やこんにゃくを使ったバーチャルフードを、VR空間内では別の食べ物として表示。
さらに、VRと連動した香りを流すことによって、架空の食事を楽しむことができる。
これによって、仮想空間では食べたいものを食べたいだけ食べつつ、実際に食べているのは寒天やこんにゃくでヘルシーさを保つ…ということが可能に。
それ以外にも、アレルギーを持つ人にとっては、アレルギーのため食べられないモノが存分に食べられるという点もうれしい点だ。
アレルギーの悩ましいところは、必ずしも嫌いなものを食べたらアレルギーの症状が出るというワケではない点。
筆者も、メロンが大好きなのだが、アレルギーのため食べることはできない。
「Project Nourished」によってメロンを好きなだけ食べられる(しかもヘルシーに)というのであれば、この上なくハッピーだ!
風味だけなら嗅覚VRでOK!?VR嗅覚デバイス
上に書いた通り、普段食事の際に感じている「味」は、「味覚」だけではなく、「風味」として「嗅覚」でも感じている。
「嗅覚」で味わう「風味」が「味」に対して与える影響は非常に大きく、「味」の8割は「風味」によって構成されているとも。
風邪を引いた際、食べ物の味がほとんどわからなくなってしまうのはこのためだ。
鼻づまりによって「嗅覚」が鈍感になり、甘味や塩味といった「味覚」のみしか感じられなくなってしまった状態こそが、風邪で食べ物の味がわからなくなってしまった状態。
なので、実は「味覚VR」がなくとも、「嗅覚VR」が実現すれば、その時点である程度食べ物の味が楽しめるようになる。
過去の記事でも、既に紹介しているが「嗅覚VR」には次のようなものが存在している。
PSVRでも使える「VAQSO VR」
お菓子の「スニッカーズ」と同サイズのデバイスを、「HTC VIVE」や「プレイステーションVR(PSVR)」「Oculus Rift」といった従来のVRヘッドセットの下に磁石で装着。
ワイヤレスでコンテンツと連動し、コンテンツの展開に応じて内蔵する匂いのカートリッジから匂いを放出するというデバイス。
2017年冬のリリース予定だ。
匂い以外に風や湿気、熱も再現する「FeelReal」
マスク型のデバイスで、匂いに加えて風や湿気、熱なども再現できる。
温度や湿気が感じられるのなら、食べ物が発する、熱気を伴った匂いの雰囲気をリアルに再現できそうだ。
味覚VRはより人々を健康にする!?
お腹が減っていないのに、ついつい間食してしまったり、大好物だからついつい食べ過ぎてしまったり…という経験は誰もが持っているのではないだろうか。
「味覚」は本来、人間の体に悪影響を及ぼす毒性の高いものを見分けるため備わっている感覚。
しかし、口にするものの安全が保証されている現代社会においては、味覚は「美味を味わうための感覚」という娯楽的意味合いが強い。
だからこそ、「味覚」に流されてカロリーをとりすぎ、逆に体に悪影響を及ぼしてしまう…ということが発生してしまうのだ。
そんな中、もし「Project Nourished」のような仕組みが普及すれば、人々はより健康になるはず。
普及することで、寒天やこんにゃくがベースのバーチャルフードも、サクサクしたチップス状のものや、ライス状のもの、肉質のもの…など、さまざまなバリエーションが出て、バーチャルフードとしての美味しさも追及されていくだろう。
より健康的により美味しいものが食べられるなら、それに越したことはない!
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