
ALPS Haptic Trigger Plusコントローラー
VRヘッドセットとハンドトラッキングコントローラーを使うことで、ユーザは現実の世界を離れてバーチャルな世界にどっぷりと浸ることができる。だが、これ以上の没入感を提供することを目指してVRアクセサリの開発を続けている企業も多い。
手だけでなくユーザの下半身や全身の動きをトラッキングすることを目指すデバイスもあれば、振動や圧力、あるいは温度やにおいといった形で現在のVRには欠けている情報をユーザに提供しようとするものもある。こうしたデバイスが使われるようになれば、VR体験はより現実の体験に近いリアルなものになるだろう。
CEATEC 2017で展示されたALPSのHaptic Trigger Plusコントローラーは、それを握るユーザに熱さや冷たさを感じさせるデバイスだ。
トラッキングとフィードバックの限界

Oculus RiftとTouchを含む新しいパッケージ
現在販売されているVRデバイスを使った家庭用のVRシステムでは、VRヘッドセット+ハンドトラッキングコントローラーまたはリモコンという形が一般的だ。
PCベースVRシステム
HTC ViveやOculus RiftといったPCベースのヘッドセットを使うシステムでは、ハンドトラッキングコントローラーによってユーザの手の動きがトラッキングできる。これらのシステムではヘッドセットの位置をトラッキングするために外部にベースステーションを設置するので、ヘッドセットと同様にコントローラーもトラッキングされるのだ。
Oculusは長くハンドトラッキングコントローラーのTouchをヘッドセット本体とは別売のオプションという形で販売しており、Rift本体にはXboxのゲームパッドをコントローラーとして同梱していた。Oculus Rift発売時にTouchの開発が間に合わなかったのがそもそもの理由だが、その状態がTouch発売後も続いていたのだ。
しかし、先日のパッケージリニューアルに合わせてOculus RiftにはゲームパッドではなくOculus Touchが標準で付属するようになっている。OculusはかつてOculus Touchとゲームパッドが共存していくと主張していたが、実情として最近のVRゲームはほとんどがハンドトラッキングコントローラーでの操作を前提にしており、Oculus Rift購入者はTouchも合わせて購入するようになっていた。企業側がユーザのニーズに合わせて付属品を変更した形だ。
ヘッドセットでユーザの頭、ハンドトラッキングコントローラーでユーザの手の動きを認識し、ユーザが立っている場所の移動もトラッキング可能となっている。ロケーションベースのVRのように広い空間を使えるわけではないが、一定のプレイエリア内を移動しながら遊べるルームスケールVRに対応するコンテンツも開発されている。
モバイルVRシステム
PCベースのVRシステムと異なり、スマートフォンを使うモバイルVRシステムでは外部にベースステーションを設置しない。そのため、Gear VRやDaydreamといったモバイルVRプラットフォームのトラッキングは本体に内蔵されたセンサーに依存している。
もちろんモバイルVRでもユーザの頭の動き(首を回したり、上下を見たり)はトラッキング可能だが、ユーザ自身が前後左右に移動してもその動きをVRゲームに反映することはできない。
また、同じ理由でハンドトラッキングコントローラーも使えない。2017年版のGear VRやDaydreamにはリモコンが用意されているが、リモコンの動きをトラッキングしているわけではなくリモコン内部のセンサーによって操作を感知しているのだ。
MRシステム
先日Acerの開発キットが発売され、10月から11月にかけて各社から発売されることが決まっているWindows Mixed Reality対応のMRヘッドセット。
このヘッドセットを使うシステムでは、PCベースのVRシステムと違って外部のベースステーションを使わない。しかし、HTC ViveのワンドコントローラーやOculus Touchのようなハンドトラッキングコントローラーが利用できる。
これはインサイドアウトのトラッキングが採用されているためだ。外部にベースステーションを設置する代わりにヘッドセット本体に内蔵されたセンサーが外の状況を捉えるために利用され、ヘッドセット自体の位置やハンドトラッキングコントローラーの位置をトラッキング可能にしてくれる。
現行システムの限界
全てのシステムに共通するのは、ユーザにVR(MR)映像を見せるヘッドセットだ。加えて、多くのシステムでコントローラーが採用されている。トラッキング方式によってコントローラーの仕組みやトラッキング精度は異なるが、いずれもユーザがコンテンツを操作するための重要なデバイスとして機能する。
だが、どのシステムを使う場合でもフィードバックとして得られるのは映像・音の変化やコントローラーの振動に限られる。温度や圧力は感じられず、また下半身の動きは基本的にトラッキングされない。
より強い没入感を求めて

CEATEC 2017で展示されたHaptic Trigger Plusコントローラー
現行のVRシステムやMRシステムで満足できないデベロッパーたちは、さらなる没入感を求めて新たなデバイスを開発している。
Haptic Trigger Plusコントローラー
ALPSのHaptic Trigger Plusコントローラーも、そうしたデバイスの一つだ。
このコントローラーは、握っているユーザにVRオブジェクトの熱さや冷たさを伝えることができるという。また、圧力によるフィードバックで物体の柔らかさ・硬さを伝えることもできるようだ。これがあれば、金属でできた武器を握る感覚と血の通った動物を捕まえる感覚は全く異なるものになるだろう。
残念ながらUber Gizmoの紹介したHaptic Trigger Plusコントローラーに対応するシステムやコンテンツといったものはまだ発表されていないが、VRゲームや一般的なテレビゲームの体験を変えてくれるものになるかもしれない。
同様のアイデアに基づいた研究を行っている企業は他にも存在しており、TEGwayのThermoRealやAxonVRのHaptXも温度の再現が可能な素材・システムだ。HaptXでは、温度だけでなく圧力も再現されるという。
VRgluv
HaptXと異なり温度は再現できないが、VR空間のオブジェクトに触れた感触を得られるデバイスとしてはVRgluvやManus VRグローブもある。
これらのデバイスは全身ではなくユーザの手を覆う手袋ないしはグローブのような形状であり、指の動きを細かくトラッキング可能なコントローラーとしての機能も持つ。手の位置だけでなく指の一本一本まで細かくトラッキングするため、VR空間で様々な動作ができるようになるだろう。
Knucklesコントローラー
指の動きをトラッキングすることだけが目的であれば、手袋型のデバイスを使わない方法もある。
Valveが開発を進めているというKnucklesコントローラーでは、コントローラーを握ったときに指が触れる位置にあるセンサーによって「指を伸ばしているのか、握っているのか」を判断するという。
あるいは、Leap Motionの技術を応用する方法もある。手に特別なデバイスを装着しなくても、ヘッドセットに内蔵したセンサーによってユーザの指をトラッキングできるようだ。
Vive Tracker
ここまでのデバイスはいずれも開発中・試験中のものだが、Vive Trackerは違う。HTCから既に販売されているデバイスであり、取り付けたものをなんでもViveのトラッキングに対応させられるセンサーだ。
バットのような日用品に取り付けてVRゲームのコントローラーにする使い方はもちろん、ユーザの足に取り付けて下半身のトラッキングを行ったり、Vive以外のVRヘッドセットに取り付けたりとアイデアと技術次第で無限の可能性を持つデバイスである。
発売時期が今年の春と遅かったこともあってVive Trackerに対応するアプリはまだ少ないが、対応タイトルが増えてくるかもしれない。
トラッキング能力の拡張や圧力、温度といった触覚フィードバックの追加が行われればVRへの没入感はより強いものになる。ゲームやハイテク機器を扱うイベントでは毎回新たなVR関連デバイスが展示されており、ヘッドセットだけでなくVRをより楽しむための新たなデバイスからも目が離せない。
参照元サイト:Uber Gizmo
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