米軍では兵士の訓練に活用できる技術として、VR/ARを積極的に導入しています。
最近では、22歳の学生起業家によって設立されたVINCIと米国空軍が、VRを使ったメンテナンストレーニングシステムの提供に関して100万ドルの契約を結んだことが話題となっています。
VINCIによる航空機のVRメンテナンストレーニングシステム
画像:VINCIが公開した航空機メンテナンスVRのデモ動画
今回話題になっているVINCIは、22歳の学生起業家Eagle Wu氏によって設立された新興のVR企業で、様々な分野でのVRトレーニングソリューションを提供しています。
VINCIが米国空軍に提供したのは、航空機のメンテナンスを訓練するためのVRトレーニングシステムです。
実際の航空機が基地にいなくてもVRで非常にリアルに再現された航空機を体験することができるので、メンテナンスに関する知識や技術、経験を積むことができます。
米空軍の訓練施設の問題点
米国空軍の航空教育・訓練軍団は作戦部隊の任務遂行の訓練を行う組織です。
そして、作戦の遂行のためには航空機のメンテナンスの訓練が欠かせません。
しかし、航空教育・訓練軍団は多くの訓練生を抱えていて、訓練生全員のために教育用航空機または物理シミュレータを準備するのには多額のお金がかかってしまいます。
経費を削減するため、現場では最新の航空機を使っているのにも関わらず、訓練で使うのは1970年代に使われた機体や技術というのが実情です。
その結果、訓練と実戦の現場で大きなギャップが生まれ、訓練を積んだにも関わらず適切に対応できなくなるという問題があります。
VINCIの航空機のVRメンテナンストレーニングシステムに現場でも歓迎の声
VINCIが提供した訓練システムでは、低コストのHTC Viveヘッドセットを使用してVR空間の航空機でトレーニングを行うことができます。
新たに航空機を揃える必要なく、現場で運用中の航空機の訓練を確実に行えるようになりました。
また、VINCIのプラットフォームを利用すれば、訓練指導者はプログラミングの知識・経験の必要なく、新しい訓練パターンを自分で作成することも可能です。
航空教育・訓練軍団の指導員は、
「航空教育・訓練軍団では年間530人の訓練生を指導し、23種類の機体の取り扱い方を教えています。VINCIは、私たちが指導する内容と現在運用されている航空機との間のギャップを埋めるのに役立ちます。そのため兵士が勤務地に到着したときの戦闘準備のクオリティを向上させることができます。」
と語っており、訓練にかかる費用を大幅に削減しながら航空機保守に当たる兵士の訓練を適切に行える技術として、航空教育・訓練軍団でも歓迎されています。
軍事分野での活用例が目立つVR/AR技術
今回のVINCI以前から、米軍はVR/ARを積極的に訓練で活用しています。
今年の7月には、核戦争を想定した戦術部隊の訓練のためにVR/AR技術の活用について実験を行なっていることが明らかになりました。
また、8月にも米海軍がARヘッドセット「Magic Leap One」を用いた訓練システムを導入し、兵士の養成を行なっていることが報じられています。
さらに、米国だけでなく英国や中国でも、軍がVR/AR技術を用いた訓練システムを採用、開発を進めていることがわかっています。
まとめ
議論があるところかもしれませんが、VR/AR技術の軍事分野での活用例は増えており、10年以内に2,000億円規模の市場になるという予測もあるほどです。
パソコンやカーナビのように、軍事分野での研究・開発は新しい技術にとっては技術革新や普及のきっかけとなる例が多くあります。
VINCIのEagle Wu氏も今回の米空軍との契約を「VRソフトウェアを前進させ、このテクノロジーをより広い分野で利用できるようにする」大きなチャンスと捉えているようです。
VINCIと米空軍の契約が話題になったのは、Wu氏の22歳という若さが注目を集めたということがあると思いますが、今回のニュースをきっかけにVRベンチャーがますます活気付くのではないでしょうか。
参考:VR SCOUT
Copyright © 2019 VR Inside All Rights Reserved.