ロシア・モスクワ州クラスノゴルスクの牧場では、VRを活用した牛乳の生産量を向上させる異例の取り組みが行われています。
乳牛に牧草地のVR映像を見せることでリラックスした状態にし、牛乳の質や量を増加させるというテストが行われたことが明らかになりました。
乳牛にVR映像を見せるテストの内容とは?
今回モスクワで行われた乳牛用VRの実験は、牧場のスタッフ、農業食糧省の公務員だけでなくIT技術の専門家や研究者なども交えて行われたものです。
乳牛に見せるVR映像は、牛にとって快適な環境であるのどかな牧草地の風景です。
しかも、単なる牧草地の映像ではなく、牛の視覚の研究結果に基づいてよりよく牛が知覚することができる色合いに調整されています。
そのため、人間が見ると奇妙に感じてしまう映像となっていますが、牛にとってはもっともリラックスできるVR体験をすることが可能です。
牛に装着させるVRヘッドセットも、人間が使う通常のVRヘッドセットではなく、獣医師の協力のもと牛の頭部の骨格に合わせた形状となった特別仕様となっています。
モスクワの農業食糧省のスタッフによると、テストの結果、乳牛の不安が軽減し、気分が高揚したことを示すデータが見られたとのことです。
とはいえ、VRが牛乳の生産量増加にいかなる影響を与えるかは未だ解明されていないため、さらなる研究が必要になるとしています。
感情が安定した牛からは上質な牛乳が出る?
オランダのワーゲニンゲン大学の乳牛と環境の関係についての研究によると、乳牛がいる環境の条件は牛の健康に大きく影響することがわかりました。
その結果、生産される牛乳の量と質にも大きな影響を与えることになります。
同様の研究結果は英国のスコットランドの農業大学などからも発表されており、牛の感情と牛乳の生産量の相関関係は畜産業界としても無視ができない状況です。
そのため、様々な試みがすでに各国で進行しています。
例えば、アメリカでは乳牛をマッサージするブラシを導入したり、ヨーロッパでは牧場内の移動をスムーズにするためのロボットシステムを稼働させたとのことです。
また、ロシアではVRの他にも、クラシック音楽を牧場内に大音響で流し、音楽のリラックス効果によって牛乳の生産量向上に繋げているとの成果が報告されています。
まとめ
モスクワの牧場で行われたVR映像を牛に見せて牛乳の生産量アップを図る取り組みは、画像のインパクトが強く世界中で話題となっています。
科学的な根拠を持って行われたことに驚いてしまいますが、VRを活用することで厳しい環境のもとでもリラックスした状態に牛を安定させることができそうです。
そうなれば、各国の牧畜の発展につながっていくのではないでしょうか。
しかし、いいことばかりではなく、動物虐待との関係をどのように考えるかという課題も残っています。
VRの活用例が増えるにつれて、このような倫理的な問題も増えてくるかもしれません。
ソース:Russian Farmers Using VR To Calm Their Cows And Increase Milk Production[VR Focus]
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