2016年1月に日本初のVRに特化したインキュベーションプログラムを開始したTokyo VR Startups(TVS)。
日本でのオープンイノベーションを加速させ、日本から世界を目指すプロダクト・サービス創出することを目指すTVSの國光 宏尚氏、新 清士氏にお話を伺ったので紹介する。
――本日はよろしくお願いします。まず、Tokyo VR Startup、第1期終了後の成果はどうでしたか?
國光氏:成果はかなり出たと思います。
第1期は、5社のうち1、2社からステージAにいってVR専業でやっていける企業を出すという目標でした。
その結果、5社中多くのところが次のステージにいけるだろうというのが見えてきたので、そういった意味では成果は上がったと思います。
アメリカだと、企業から投資を受け、チームとしてやっているスタートアップが多いですが、国内だとあくまでの片手間というか、隙間時間でやっているという形が多いように思います。
その中から、VR専業でやっていけるスタートアップを増やすというのが目標だったので、そういった意味でも成果は上がったと思う。
――多くが次のステージに行くというのはとてもスゴいことだと思います。日本は海外と比べてVRに関する投資に対して積極的ではないと思いますが、多くの会社が次のステージにいける要因はなんだと思いますか?
國光氏:現在がVR元年と言われている大きいところとして、FacebookやGoogle、Steamといった大きな企業が本気で取り組んでいるから、VRという分野に対して挑戦しようという企業がいて、そこに対してお金を出そうとする投資家がいる。そういったエコシステムが築けているのではないかと思います。
Facebook、Sony、HTCといった巨大な企業が片手間ではなく全力で取組んでいる事業ですからね。
――なるほど。ちなみにAppleはどう出てくると思いますか?
國光氏:DaydreamのようなモバイルのVRで参入してくるんじゃないでしょうか。
今のiPhoneって、特別買い換えるような大きな理由がないと思うんですよ。ただ、モバイルのVRが出て、それが新しいiPhoneでないと遊べないとなると、それは買い換える十分な理由になりますよね。
OculusがスタンドアロンなHMDを発表し、どこでもルームスケールVRが体験出来るという強みを見せつけてきました。
遠くない未来、スマホがあればルームスケールVRができる時代が来るはずで、それにはハイスペックなスマホが必要になるし、それが新機種を買う理由になると思うんです。
――第2期の企業を選考する際に意識したことはありますか?
國光氏:第2期を始めるにあたり、3つの新しいことを考えようと決めました。
1つ目はチャレンジです。当初と比べてVRのスタートアップも増えてきていて、資金調達も増えてきています。
その中で、誰もがやっていることをやっても意味がないですし、チャレンジングな領域にフォーカスしていこうとしている
2つ目は、大学などの研究機関とスタートアップをつなげるという部分。
海外では、大学などで研究していた内容も含めてのスタートアップとして事業を起こす場合が多く、そのほうが技術レベルが高いです。
日本ではとりあえず起業して、UI周りなどだけをサクッと作るみたいな企業が多かったりするので、そういった意味ではやはり専門的に研究している機関とつなげて、レベルを高めていきたいと思いました。
最後は、大企業とスタートアップをつなげるということです。
アメリカの場合、FacebookやGoogle大企業がVRをどんどん取り入れていますが、まだまだ日本は遅いですよね。
事業としてVRをやっていくには資金が必要なので、それには大手の企業と協力してやるのが手っ取り早いです。海外では、ディズニーがVR企業に多額の出資をしていますし。
――第2期のメンバーに期待することはなんでしょうか?
國光氏:期待に関しては第1期と同じですね。2月のデモデイで結果を残してシリーズAに行ける会社を増やすということに尽きます。
VR専業で次のステージにいける会社を1社でも増やしたいですね。
第1期のメンバーは、最終系のイメージがわかりやすかったんですが、第2期はそれが予想できないようなものが多く、挑戦のドキドキ感があるので、そういった意味でも2月が楽しみです。
――ありがとうございます。
また、Tokyo VR Startups 第2期参加チームへのインタビューも行ったので紹介する。
カバー株式会社
カバー株式会社はインターネット上で遠く離れた人と体験を共有できるソーシャルVRサービスを展開する企業。
カバー株式会社 谷郷氏
――ソーシャルのVRということですが、具体的にどういったプロダクトなのでしょうか?
一言で言うと、ゲームを主軸にしたソーシャルサービスですね。
既存のソーシャルVRは、あまりその中でやることが少ないという気がしているんですが、そんな中で、日常的に使えるようなサービスを目指しているという感じです。
去年からVRに取り組んでいて、その時に知り合ったVR界隈の方から協力してもらいつつ開発しています。
ゲームを主軸に作ってはいますが、現在開発中のものを最終商品に入れるどうかも含めて、まだどうなるかは分からないですね。
――将来的にどのようにコンテンツを広げていこうと考えていますか?
ゲームは単発のコンテンツなので、それをVRによってよりテーマパークのようなものにできればと思っています。
オンライン上で運営していけるようなレジャー施設やテーマパークのようなものですね。
――現在作っている中で課題はありますか?
日本にユーザーがいないということに尽きますね。そもそも私たちも全て英語で作っていますし。
海外で作って逆輸入するというパターンでやっているので、そこが難しいですね。しかし、その分競合もいないと思います。
しかし、チャンスがあるとはいえ、やはり資金面など大変な部分はありますね。
――海外でウケたものが日本でそのままウケるとは限らないということもありますしね
そうですね。なので、海外日本問わずウケるようなカジュアルなものを作っています。
――デモデイに向けての意気込みを教えてください。
我々はやることがはっきりしている分、目に見える結果を出していく必要があると思っています。
継続運営していけるようなプラットフォームというイメージを持ってもらえるようなプロダクトを作りたいと思っています。
――ありがとうございました。
Miletos株式会社
Miletos株式会社は、バーチャルなモノ・ヒトを現実さながらの感覚で触ることができるハプティクステクノロジーを、脳神経学的なアプローチから創り出す企業。
Miletos株式会社 三上氏
――触覚VRというとはっきりイメージがわかないのですが、簡単にいうとどういったものなのでしょうか。
VRで画面上に存在している物体を、目で見た感触そのままに指で触れるようなものを作るということですね。
そのためにはものが必要で、制御するソフトウェアも必要です。現状、その仕組みが定まっておらず、いろいろな会社が個別に作っては消えてというのを繰り返しています。
我々はそれらを統合するような共通の規格を定め、それによって、VRで見えているものに触れることが当たり前な世界を作りたいと考えています。
――デバイスではなく規格ということでしょうか?
一番大切だと思っているのはベースをしっかり作ることですね。もちろん、その後にデバイスを作ることも考えています。
最初は手袋型のデバイスを考えています。それをつかってVR上の物の触りごこち、温度などの細かい触感を再現したいです。
また、それは我々しか使えないというものではなく、どんな人でも共通して使える仕組みを作っていこうと思っています。
――触覚となるとかなり難しそうですが、デモデイに向けて目指しているのはどういったところでしょうか。
ゴールとしては、ただの振動ではわからない、手のひらを細かく動く感覚、温度が変化する感覚を実現できるということをデモデイで披露できればと思います。
今のハプティックフィードバックは振動でしかなく、それだと何か感触が返ってきたということしかわかりません。
ただの振動デバイスでは難しいところを表現していきたいですね。つきつめると、物体の表面の手触りまで表現していきたいです。
――現状の課題はどういったところでしょう
触覚そのものに対する知見をもっと深める必要があると思っています。
我々だけでは限界があるので、大学や研究者と連携してプロジェクトを進めていければと思います。
――脳神経学的なアプローチというのが気になるんですが、どういうことなのでしょうか?
頭で感じるものを同時にVRで作り出して感じさせるということですか?
現実の物体を工学的に再現するだけではリアルとは違うものになってしまいます。
神経生理学的にいっても事実で、そのノウハウを生かしたものを作っていきたい。
――最終的には、共通規格を作るというのがゴールなのでしょうか。
一番の理想はそこですね。五カ年計画で進めています。
――競合はいないんですか?
今のところ大きく声を上げているところはないですね。
振動だけならあると思いますが、触覚という全体的なところでは競合はないと思いますね。
そういった意味でもスピード感が勝負です。
――そういった意味では、手応えがあるという感じですか?
世に出ているハプティックデバイスよりは理想に近いものができるだろうという手応えは感じています。
とはいえ概念自体は数十年前からやりたいという人はたくさんいるので、完全に優位を保てているかというと、やはり時間の勝負です。どれだけ早く作れるか。
触覚に関して最先端の企業だと言っていきたいですね。
――ありがとうございます。デモデイを楽しみにしています。
後編では、日本のVRが世界に勝つには、2017年に向け仕掛けていきたいことなどを紹介する。
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