
VRデバイスを使って医師のトレーニングを行うコンテンツも開発されている
VRゲームのデベロッパーになって人気VRゲームを開発できれば、100万ドル(1億円)を越える売上も夢ではない。実際に『I Expect You To Die』や『Raw Data』など複数のVRゲームが100万ドル以上を売り上げたと発表されている。Raw Dataに至っては発売直後の昨年7月だけで100万ドルを達成しているので、その金額はさらに大きくなっているはずだ。
VRゲームの開発で大金を得ることを夢見てVRアプリケーションの開発を学ぶのも良いが、VR技術の使いみちはゲームだけではない。技術の採用が様々な分野で進むのに応じて、VRアプリのデベロッパーが求められる業界も増えているのだ。
病院では医師がトレーニングをするためにVRアプリケーションを使う方法が研究されており、ここにもVRゲーム開発者の仕事が生まれるかもしれない。
病院とVR技術

手術映像のVRライブ配信が行われたこともある
病院では、医師のトレーニングや患者への病状説明などにVR技術が利用できると期待され、一部では既に採用が始まっている。
手術のシミュレーション・トレーニング
メスを使う手術で医師の手元が狂えば患者が大きな傷を負うか、最悪の場合死亡事故に繋がる可能性すらある。エコー検査でも機械を扱う医師のスキルによって見つかるはずの病変を見逃してしまうことはありえるし、気管への挿管のような経験の浅いスタッフには難しい医療処置も多数ある。だが、最初からベテランの医師も医療スタッフも存在しない。
そこで、経験の不足している医師が患者を危険に晒すことなくスキルを高める方法として考えられているのがVRを使ったトレーニングだ。難しい手術の前にVRでシミュレーションを行っておけば、イメージトレーニング以上の効果を発揮するだろう。
VRゲームで3DCGの患者を相手に手術をするのではなく、ベテランの医師が行った手術をVR映像で追体験する方法もある。過去にはVR映像のライブ配信が行われた例もあるが、過去の手術も映像として残すことで繰り返し学習に利用できる。
救急救命のトレーニング
通常の手術では事前に周到な準備を行うが、常にそれができるとは限らない。事故にあった被害者や急病で倒れた患者などに急いで処置をしなければならない場面もある。
救急救命室では一瞬の判断の遅れが患者の生死に影響してしまうこともあり、特に経験の浅いスタッフにとっては常に緊張を強いられる現場だ。
研究されているVRトレーニングアプリでは、緊迫した救急救命室が再現されている。患者の容態を確認し、安定させるために自分自身が検査を行ったり、他のスタッフに指示を出したりと複数のことを一度に行っていかなければならない。
難しい判断をVRで練習しておくことで、本当に緊急の患者が運ばれてきたときにも落ち着いて対処できるようになるはずだ。
現在のシステムでは他のスタッフはNPCキャラクターだが、Immerseの潜水艦乗組員用トレーニングアプリのようにマルチユーザに対応すればチーム全員が一緒に訓練できるようになる。そうなれば、メンバー間の連携もより密になるだろう。
患者が使うVR

VRヘッドセットを付ける小児患者
VRデバイスは医師や医療スタッフが使うこともできるが、患者に利用してもらうこともできる。その場合の主な目的は、リラックスや入院生活によるストレスの解消だ。
VRが痛みを軽減する
いくつかの研究では、VRに患者の痛みを抑える効果があることが示唆されている。VRによって鎮痛剤の使用を減らすことができる、患者の生活の質を高めることができると言われている。
特に痛みが長く続く慢性疼痛に対しては、VRを使用することで一時的に痛みを抑えることができるという。一度VR映像を見るだけで痛みが無くなるというものではないが、視聴終了後も数時間から二日程度は効果が持続するという話もある。
引き続き研究が必要な分野ではあるが、丸一日以上も痛みが抑えられるならばVRを利用する意味はあると言えるのではないだろうか。
子供をリラックスさせる
長期に渡って通院するのは大人にとっても面倒だが、遊び盛りの子供たちにとってはそれ以上に大きなストレスになる。まして入院となれば、学校や地域の友人たちとも離れなければならない。
こうした子供たちにとって、VR映像コンテンツやVRゲームはちょうどよい気分転換になるかもしれない。化学療法を受けている間にベッドの上でVRコンテンツを視聴できる病院や、入院患者のためにVRゲームを含むテレビゲームのイベントを開催する非営利団体などが存在している。
VRデバイスは、病院で働く医師やスタッフが技術を高めたり、入院患者が気分転換をしたりするために活用され始めている。
VRでのシミュレーションならば危険がないのでトレーニングに適しており、コストも抑えることができる。患者にとっても、身体を動かすVRゲームはちょっとした運動になるだろう。ずっとベッドに寝ていると運動不足になってしまうので、自分の身体の状態に合ったVRゲームをプレイすると回復が早くなるかもしれない。
まだ小規模な研究しか行われていないが、有望な結果が出ている。信頼できる研究結果が増えてくれば、さらに医療の世界でVRデベロッパーが活躍できる場面は多くなっていきそうだ。
参照元サイト名:Washingtonian
URL:https://www.washingtonian.com/2017/09/12/hospital-just-hired-video-game-developer-medstar-virtual-reality/
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