10月20日から23日にかけて米国ニューオーリンズで開催されたユーザーインターフェースに関するイベント「User Interface Software and Technology 2019」において、MicrosoftはいくつかのVRに関する発表を行いました。
その中で特に注目されたのが、自分がいる場所とは異なる場所を散策する体験ができる空間コンピューティングについての新システム「Dream Walker」です。
空間コンピューティング「Dream Walker」とは?
今回発表された「Dream Walker」は、ユーザーがVR世界に完全に入り込んでいる間に、現実世界を障害物にぶつかることなく歩き回ることを可能にするVRシステムです。
・デュアルバンドGPSセンサー
・2つのRGB深度カメラ
・インサイドアウトトラッキングを備えたヘッドセット
などのセンシング技術を使って、現実世界の環境をリアルタイム解析して、現実のルートに沿ったVR世界を展開していきます。
歩いて通勤・通学する場合や日課の散歩など、普段慣れ親しんだ歩行ルートを移動しながら、
・ニューヨークの雑踏
・ビーチ
・西部開拓時代の風景
などのVR世界を探検するという体験が可能です。
システムがユーザーにぶつかりそうな物体や歩行者を検知した場合、コンクリートブロックのようなものが出現して、ユーザーがぶつからないように知らせてくれます。
「Dream Walker」のテスト映像からわかること
今回公開されたテスト映像では、8人のユーザーがVRヘッドセットを装着し、バックパック型のPCを背負って、Microsoft社の構内を15分間歩き回る様子が収められています。
ユーザーにはアニメーションの車、人、街路樹や街灯などでいっぱいの仮想マンハッタンだけが見えていている状態です。
ビデオで特に目を引くのは障害物をオブジェクトで注意喚起するだけではなく、黄色い矢印やボールマーカーに従って歩くことで、現実での目的地に到着することができる点です。
そのため、何度も歩いてきたのと同じ古いルートを仕事に歩いていながら、突然の異国の街を旅する体験を安全にすることができるようになります。
その他のMicrosoftのVR新技術
「User Interface Software and Technology 2019」では、Dream Walkerの他にもVRの技術開発に関する発表が行われました。
アイトラッキング「Mise-Unseen」
まず、VR体験を向上させるためのアイトラッキング技術「Mise-Unseen」が挙げられます。
「Mise-Unseen」とは、ユーザーの視線を追跡してどの方向に注意が向いているかを検出して、集中している部分以外の景色を静かに変更することができるものです。
ユーザーのVR体験を邪魔することなく、VR空間の状況を更新することができます。
触覚フィードバック「CapstanCrunch」
もう一つの開発が進んでいるのが「CapstanCrunch」という物体を握ったときに感じる抵抗を再現する触覚フィードバック技術です。
通常、触覚を再現する場合大きなモーターが利用されますが、「CapstanCrunch」では小さなモーターとリニアブレーキ、方向性ブレーキのみとなっています。
このことによって、小さく軽量を保ちながら人間の手によって加えられる強い力と同じような感覚を生み出すことが可能です。
まとめ
Microsoftが「Dream Walker」をはじめとするVR分野の技術開発に関する発表を行いました。
技術自体はもちろんですが、現在HoloLens2などMRのイメージが強いMicrosoftがVR技術の開発に熱心な姿勢を見せること自体が、VR業界にとって大きなインパクトを与えるものとなりそうです。
今回発表された技術がどれだけ本格的に製品化されるのかは未定ですが、Microsoftの動向次第でより広い分野の企業がVR事業に乗り出すのではないでしょうか。
MicrosoftのVR開発の続報に期待したいですね。
参考:Take A Walk Anywhere In The World With Microsoft’s Latest VR Research[VRFocus]
参考:A new era of spatial computing brings fresh challenges—and solutions—to VR[Microsoft Research Blog]
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